Flare

写真とカメラにをメインに、そして時々ヘビメタや文学関係を書いています。

メタラーがモルモン教の宣教師から逃れられなかった話

メタラー vs モルモン教の宣教師

 

これまでの人生で、3回モルモン教の宣教師に声をかけられたことがある。

 

宣教師は決まって、白い半袖のYシャツにネクタイ姿の外国人の若い男性二人組なのである。

 

一度目は高校生のとき。

 

その時はモルモン教なんていう存在は知らなかったし、道に迷った観光客だと思って素直に話を聞いてしまった。

 

二度目は大学生のとき。

 

もう騙されないぞ、と思って無視しようとしたけれども、気がつくと1時間ぐらい話を聞くはめに。

 

三度目はつい先日。

 

イヤホンをして歩いていたら、後ろから肩を叩かれた。

 

振り返ると、例の出で立ちをした若い外国人の男二人がにこにこと立っていた。

 

出たな、宣教師! もうお前らの話は2回も聞いたんだ。悪いけどその手の話は興味が無いんだ。

 

「少しお話、いいですか?」

 

何とも流暢な日本語である。

 

いや、感心している場合ではない。

 

「悪いんだけど」イヤホンを外しながら言った。「これから約束があって時間が無いんです」

 

「そんなにお時間は取らせません」

 

もう一人の男がこれまた流暢に日本語で引き留めた。

 

仮に彼を厚切りと呼びたい(見た目が厚切りジェイソンそっくりだったので)。

 

そして最初に話しかけた男を仮にサムと呼ぼうと思う(見た目が指輪物語のサムに何となく似ていたので)。

 

厚切りがリュックからパンフレットを取り出した。

 

まずい、ここで彼らのペースに乗せられたら最後、1時間ほど聖書云々の話を聞かされる。

 

「じゃあ、本当に急いでいるので」

 

イヤホンを耳にはめ直して立ち去ろうとした。

 

「何の音楽を聴いているんですか?」

 

サムがまた引き留めた。

 

「Devil Wears Pradaっていうメタル・バンドです」

With Roots Above and Branches Below

With Roots Above and Branches Below

 

 

The Devil Wears Pradaはアメリカはオハイオ州出身のメタルコア・バンドである。

 

ほら、聴いているのはメタルだぜ。

 

キリスト教的な音楽だぜ。

 

こんな音楽を聴く輩に聖書云々言っても無駄だぜ。

 

これで自分に対する興味は失せるだろう、そう思った。

 

だが、これを聞いた厚切りが破顔し、WOW! と言った。

 

「クリスチャンメタルコア! 彼らクリスチャンです! 私も大好きです!」

 

う、うかつだった。

 

クリスチャンメタルコア――聞いたことはある。

 

バンドメンバーがキリスト教徒で、歌詞も聖書等に基づいて書いて歌うメタルコア・バンドである。

 

デスヴォイスで「神を称えよ!」とか歌っているのだ。

 

だが、Devil Wears Pradaがクリスチャンメタルコアだとは知らなかった。

 

だってバンド名に“Devil”の名を冠しているのに、クリスチャンメタルコアなんて誰が信じるだろう。

 

「August Burns Redとか知ってますか?」

 

今度はサムが聞いてきた。

 

「はあ、まあ」

 

August Burns Red――アメリカはペンシルベニア出身のメタルコアバンド。

 

最近ではグラミー賞のベスト・メタル・パフォーマンス部門でノミネートするなど活躍しているバンドだ。

 

一応、サード・アルバムのみ持っている。

 

あ、まさか彼らも・・・。

 

「Oh! 彼らもクリスチャンメタルコアです。最新アルバムは買いましたか?」 

PHANTOM ANTHEM [CD]

PHANTOM ANTHEM [CD]

 

 

「いえ・・・」

 

「買うべきですよ!」厚切りが口角泡を飛ばす勢いで言った。「あれは最高傑作です! ぜひ、買って聴くべきですよ」

 

「はあ・・・」

 

と、まあこんな調子で30分ほど捕まって、クリスチャンメタルコアの素晴らしさについて語られた。

 

クリスチャンメタルコア、恐るべし。

 

今度「何を聴いているのか?」と訊ねてきたら、絶対にMayhemかEmperorと答えようと固く誓った。

 

De Mysteriis Dom Sathanas

De Mysteriis Dom Sathanas

 
In the Nightside Eclipse

In the Nightside Eclipse

 

 

 

冬になると無性に聞きたくなるメタル・アルバム5選

寒さが肌を突き刺し、空気もなんだかピンと張る季節になりました。

 

そういう時に何だか聞きたくなるヘヴィメタルがあります。

 

今回は、その中から5枚のアルバムを選び、紹介していきたいと思います。

 

 

In Flames『Soundtrack to Your Escape

Soundtrack to Your Escape

Soundtrack to Your Escape

 

 

 スウェーデンヨーテボリ出身の“メタル界の重鎮”In Flamesの7枚目となるアルバム『Soundtrack to Your Escape』です。

 

前作『Reroute to Remain』では、北米でのSlipknotとのツアー(2001.8)を通して影響を受けたとみられる音楽性(クリーンボイスを取り入れる等)が随所に見られました。

 

そのため、ファンからは賛否両論が巻き起こり、今でも問題作として語られています。

 

しかし今作は、その音楽性を自分たちの音楽と見事なまでに融合させ、さらに次作である名盤『Come Clarity』へ昇華させています。

 

ライブで定番の「Quiet Place」や「My Sweet Shadow」が収録されており、約47分間のすばらしい「逃避」となるアルバムで、寒い日にじっくりと聞き込みたいアルバムです。

 

 

Dark Tranquillity 『Projector

Projector

Projector

 

 

こちらもスウェーデンヨーテボリ出身のDark Tranquillity

 

先に紹介したIn Flamesと肩を並べる北欧の重鎮です。

 

本作は4枚目のアルバムで、ファンの間では問題作でもあります。

 

これまでの3作で聴くことができたアグレッシヴな音楽性からがらりと変え、クリーンボイスやキーボード、ピアノを導入するなどゴシックに近いものになりました。

 

個人的には8枚目『Fiction』と同じくらい好きなアルバムで、特に1曲目「FreeCard」は寒さ染み入る季節にぴったりの哀愁があって、この季節になるとよく聴いています。

 

 

Tool『Lateralus

Lateralus

Lateralus

 

 

アメリカはロサンゼルス出身のバンド。

 

メタルというよりも「オルタナティブ」とか「プログレッシブ」と形容されることもあるが、間違いなく世界で最もヘヴィなバンドです。

 

本作は3枚目のアルバムで、個人的には最高傑作だと思います。

 

内容については、何だかよくわからないけれども、すごいアルバムなんです。

 

何がすごいのかというと、音楽から壮大な宇宙を感じるのと同時に、何だか自分がちっぽけな存在に思えてきてしまうのです。

 

 

Nightwish 『Century Child

Century Child

Century Child

 

 

フィンランドのシンフォニックメタル・バンドのNightwishの4枚目のアルバム。

 

「シンフォニック」という名のとおり、オーケストラや合唱とのアンサンブルを軸としたサウンドが特徴で、今作よりその音楽性を取り入れて成功を収めています。

 

ところで「メタル」というとデスボイス等の「ギャーギャー声」のイメージが強いが、こういうシンフォニックメタル・バンドのような歌唱方法をとるジャンルもあるのです。

 

特に、この時のボーカルのターヤ・トゥルネンは、メタル界において最も美しい声の持ち主として知られています(現在はバンドから解雇されてソロ活動中)。

 

本アルバムは、Nightwishのアルバムの中で最もダークであり、荘厳的だと思います。

 

冬の夜に一人でしんみりと聴きたい1枚です。

 

 

Paradise Lost 『Paradise Lost

PARADISE LOST

PARADISE LOST

 

 

イングランド出身で、ゴシックメタルの元祖であるParadaise Lostの10枚目となるアルバムです。

 

初期はゴシックメタル、中期はシンセポップと変遷し、再び本作でゴシックメタルへと原点回帰しました。

 

アルバム名に自らのバンド名を冠したところから、原点回帰および復活への意気込みが感じられます。

 

初期で聴くことができた、悲哀に満ちそして重く美しいサウンドがより洗練され、まさしく彼らの最高傑作と評することができる内容です。

 

イングランドの冷たく重々しい冬の雨を想起させられるようなメロディは、この季節にこそ聴くにふさわしいアルバムだといえるでしょう。